本を売ることが、自由を売ることだった。
そんな時代がかつて台湾にあったことを、あなたは知っていましたか?
どうもこんにちは、台湾在住4年目のまえちゃん@Maechan0502です。
さて、ぼくは現在ここ台湾に住んでいるんですが、かつて台湾では1980年代がそんな時代でした。
一つの政党(国民党)が一党独裁支配し、国民を監視する。国民のコントロールに都合の悪い情報を持つ本は禁書にして、情報統制する。
そんな風に国民の生活が縛られていたので、当時の台湾人にとって禁書の本をこっそり作って売ることが、ある意味、政府に反抗して自由を勝ち取る行為だったのです。
そう。日本の同時代の若者は、エレキギターを持って大人に反抗して歌うことがカウンターカルチャーだったのに、台湾では自由に本を売ることが政府に反抗するカウンターカルチャーになっていました。
今回はそんなバックグラウンドを持つ伝説的な台北の本屋・唐山書店に行ってきたので、本屋さんのストーリーとともに紹介します。
ではどうぞ。
台湾の台北にある唐山書店とは?
唐山書店は、台北の台湾大学近くにある書店です。
台湾大学は、台湾の東大のような最高レベルの大学で、このあたりのエリアは他にもたくさん書店と多くの台湾の知識人が集まっていました。
そのなかでも唐山書店は30年以上の歴史を持ち、台湾民主化以前は扱いにくい専門書を取り扱っていた歴史を持っています。
台湾は1996年に民主化されたんですが、それ以前は政府が禁止する人文科学系の図書を売っていました。
また1994年6月までは台湾に海賊版のコピー図書を規制する法律がなかったことから、外国人の著者に許可を得ずに、海賊版を勝手に作って売っていたこともあります。
ある意味で唐山書店は台湾の独裁政府に反抗しつつ、海賊のようにアウトロー(法律外)な自由さを兼ね備えていたそうです。
まあ今から見ると許されることではありません(笑)
ただここの書店が、ネットのない時代に海賊版の書籍を出していたからこそ、台湾人学者の知識と当時の海の外にある国際社会を繋げられていたという背景がありました。
ちなみにこのあたりの唐山書店のストーリーは、以下のリンクで読むことがてきます。
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http://thousandsofbooks.jp/wp-content/uploads/2018/08/TB_taiwan_browsing.pdf
唐山書店の中に入ってみた
ちょっと話が小難しくなったので、一気に話を2018年の現在に戻し、今の唐山書店について紹介してみたいと思います。
唐山書店は台北市内を走る地下鉄で、台電大樓という駅があるので、この駅が一番の最寄駅です。
今回はアメリカのニューヨーク・ブルックリンの本屋で働いてるアメリカ人のキャスティンと一緒に行ってきました。
唐山書店は今まで3回ほど場所が移転しているんですが、いつも家賃を安く抑えるために、地下で本屋を開いているそうです。
地下に降りようとすると、障害者の方ようにスロープがありました。
またけっこうチラシが張り巡らされていて、まるで日本の下北沢らへんにあるライブハウスのようです。
この辺りが台湾の文化なんだろうなぁと思わされました。
唐山書店で取り扱っている本
唐山書店はかなりマイナーな本に絞って取り扱っています。
オーナーの陳隆昊(チェン・ロンハオ)さんの方針で、ずっと人文・社会科学、学術書系の図書を30年間以上扱っているそうです。
スタッフさんに撮影許可を取ってカメラを向けると、そこには台湾文学や歴史、政治の本などが置かれていました。
たとえば日本人が戦前に移住した時の本も置いてあります。
『來去吉野村』という本は、戦前に日本人が台湾の花蓮へ移住し、開墾した日本人村の名前です。
こういう書籍は日本国内で出版される場合、日本人が書いた書籍がほとんどで台湾人が記した本は貴重なんですが、思わず手にとって読みたくなってしまいました。
一見難しそうなんだけど、日本人は漢字読めるし、台湾で使われてる漢字は繁字体です。
日本人ならがんばれば4割くらい分かるので、台湾の書店の面白いと改めて感じました。
タイなどの異国の本屋さんはわからないものですが、台湾は同じ漢字を使っているので、日本人にもオススメしたいです。
唐山書店にはインディペントな雑誌も多数あり
また日本人のぼくとアメリカ人のキャスティンが思わず立ち止まってしまったのは、唐山書店の雑誌コーナーでした。
出版業界では、ZINEという雑誌の一種があります。
ZINEは同人誌よりもデザインに凝っているんですけど、全国のコンビニで売るわけではないので、自分の好きな特集を組んで作った雑誌です。
このZINEが唐山書店には多いので、思わずいろいろと2人でめくってしまいました。
日本のカルチャーを紹介した『秋刀魚』という雑誌もあったし、他にもたくさんのZINEや雑誌が唐山書店にはあります。
どうやらアメリカのニューヨークの書店で働いているキャスティンに聞くと、台湾の雑誌文化はユニークだそうです。
アメリカでもZINEは売っていているんですが、すごく小さな場所でしか流通していません。
でも台湾のZINEは唐山書店のような台湾独立系書店でも売られているし、誠品書店のような大手チェーン店でも置かれています。
唐山書店だけでなく、他の台湾の書店でも、雑誌コーナーに台湾らしさが表れているのが特徴です。
唐山書店にはCDコーナーもあり
最近注目されてる台湾インディーズミュージックも置いてありました。
Sorry Youthの『海口味』など、いま日本のサマーソニックに出るほど注目されてる台湾インディーズバンドのアルバムも。
書店好きだけでなく、音楽好きぜひチェックしてほしいです。
この唐山書店に並べられているインディーズミュージックの一覧を眺めても、かなり台湾の今の音楽カルチャーを知ることができると感じました。
まとめ いま台湾の独立系書店巡りが面白い
というわけで、今回は台湾の書店の中でも伝説的な背景を持つ唐山書店を取り上げてみました。
ぼくら日本人にとって本を売る、買うという行為はごく当たり前の日常的な光景です。
でも台湾人にとっては、20年近く前にやっと民主化して手に入れられた日常でした。
ぼくは大学時代から本屋でアルバイトをして、新卒でも中古本屋の店長をやっていたのですが、ここまで本を売ることに重みを持った書店に出会ったのは初めてです。
一見普通に見える地下にある本屋ですが、まるでレジスタンスの集まる秘密基地が今も残っているようにぼくには見えました。
ぜひそんな歴史を感じつつ、いまの台湾のカルチャーを本棚から感じてみてください。
ではまた。
PS 台湾の独立系書店を知りたい人は、本が出版予定です
今回ぼくが行った台北の唐山書店なんですが、台湾で出版された『書店本事』という本の中に載っています。
この本は現在、日本語翻訳版を出版する計画が進行中で、9月18日まで本が欲しい人を集めている最中です。
クラウドファンディング形式で2,000〜5,000円くらいの応援をすると、達成した際には日本語訳の書籍や電子書籍を受け取れるので、気になった人はリンク先を見てみてください。
https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/2321
また書籍を出そうと奮闘している方にもインタビューしたので、唐山書店などの台湾独立系書店を知りたい人は、こちらの記事も合わせて読んでみてほしいです。
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