【エッセイ】 ぼくがオーストラリアへワーキングホリデーに行こうと決意したその理由 その2

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前回までのあらすじ

大学時代に初めて海外 中国の大連に短期留学したことで、すっかり海外旅行のとりこになったぼく。しかし新卒で入社したらもう海外にはほとんど行けないことが確定していた。

最後にということでインドに行ったけれど、ぼくは海外旅行をあきらめるどころか、もっと行きたい気持ちを抱えながらくすぶることになる。

【エッセイ】 ぼくがオーストラリアへワーキングホリデーに行こうと決意したその理由 その1

そしてぼくは2009年の3月に大学を卒業すると、4月から千葉県に引っ越し、すぐさま働き始めた。

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【エッセイ】 ぼくがオーストラリアへワーキングホリデーに行こうと決意したその理由 その1 | あしたはもっと遠くへいこう

目次

働いて実感した日本の働き方とそのシステム

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ぼくは新卒で某大手中古書店のチェーン店を展開する会社に勤め始めました。

新卒だったけど3ヶ月目から人が足りなくて、いきなり店長をやったし、仕事に追われる日々が始まったんです。幸い上司とまわりの先輩には恵まれ、とても可愛がってもらえたんですが、やはり海外に行くための休みなんてほぼ絶対取れないと感じました。

ぼくの働いていた会社は休みは取れても連休はムリだから、年1回に有休をまとめて取れる時に、5日間まとめて取るシステムのようでした。

そして実際に働き出すと、有休を取る以上の不自由さを実感することになります。自分が配属される店舗は上の人の意向なので、住む場所も会社に決められる仕組みを実感しました。

ぼくが会社で働くと感じたのは「安定した給料」と「手厚い福祉制度」は、「自分の時間」と「住む場所を選ぶ自由」と引き換えになるということです。

やりたくないことをしながら安定を得るために、ぼくはすごいストレスを感じたのと、朝から晩まで働いても上の人から評価されなかったら、それで終わり。努力が報われなかった時のむなしさを知りました。

もちろん会社で覚えた社会の常識や、パートさんとの信頼関係を築くために必要な信頼の積み重ね方など、働いてこそ覚えられたことはぼくの財産です。

休みが取れないというのは、そういう会社を選んだぼくに責任があるんでしょう。

だからぼくはもっと安定して、休みの希望が取れるであろう公務員試験を受けるために会社を辞め、そしてちょうど母方のじいちゃんも具合が悪くなって入院したので、横浜からじいちゃんの入院してる新潟に帰りながら、公務員試験の勉強を続ける生活を送り始めました。

 

 

 

筆記試験はパスするけど、やっぱり面接で何を言えばいいのかわからない

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もともとバカ正直な性格が災いして、全然興味のない相手や会社の人事の人に対し、ぼくは体のいいウソを大学の就活時代からつけなかったタイプでした。

地方公務員試験でも「給料が良くて、有給もちゃんと消化できる」という安定を望んでいたんで、ぼくはそのためだけに受けたところがあったんです。

そうすると困るのが、実際に面接する時でした。筆記試験は通るんだけど、やっぱり面接で何を言えばいいのかわからないんです。

「志望動機は公務員が有給を全部消化できて、安定しているからです!」

こうハッキリと堂々と言えたらどんなに良いでしょう。

憧れます。しかし面接というマジメな場所で空気を読むと、そんなことは口が裂けても言えません。一度冗談で言ってみたかったけど、さすがに一年間も予備校に通って勉強した時間をそんなことでパーにするのは無理です。

だから一応自転車が趣味だったんで「自転車道路を整備して、増えている自転車交通事故をへらして市民に貢献したい」と面接で言っていました。でも別に生活保護とかの福祉に興味があるわけでもないし、その市の人たちに全力で貢献したいという動機は全くなかったんです。

他の大学時代の友達に聞いても、

「オレが大手家具会社の面接を受けた時は「実家の前が大工さんで、小さい頃からそこで遊ばせてもらっているうちに、木でモノを作る家具というモノに憧れました」っていうことを志望動機で言ったよ。あ、もちろん家の前に大工さんなんていなかったけどね(笑)」

と言われて驚いたけど、とてもマネしたくないと思ってしまいました。

また公務員試験のために通った予備校の面接対策の授業では

「みなさん、安定を目指しているために公務員試験を目指している人が多いと思います。でもそれでは受からない!だから今から数ヶ月、みなさんは役者になってください。面接官に自分が本当にこの市で働きたいんだと思ってもらうために、演技をするんです。」

友達だけでなく、予備校の教師までこう言うことを大真面目に語るんだと、ぼくはあっけにとられました。

さらに中学時代の親友は「面接が趣味」なんですが、彼にいたってはもっとすごいです。彼は会社の休日に他の会社の面接に行って、入社する気もないのに内定をゲットしてくるんですけど、

「会社の面接ってお互いの騙し合いだから」とハッキリと言い切るほどです。

彼がそういうことをやるのは自分の他の会社での評価がどれくらいなのかを知りたいからだそうなんですけど、まあよくそういうことができるなぁと思ってました。

でもぼくはそんな話がどうしても響きませんでした。

なんでそういう体(てい)のいいウソをつけるんだろう?収入のためだろうが、大してやりたくもない仕事を得るためにウケがいいウソを考えて、そして数年、数十年の仕事にしようとする。

……それって人生のムダじゃないか?そんなことを考えるヒマがあるなら、もっと自分のやりたいことをやったほうがいいんじゃないか?

ぼくはずっと自分にはできない助言を聞きながら、ぼんやりとそんなことを考えていました。

 

 

空気を読まなきゃいけないと思った途端にダメになる自分

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ここまで読んでて不思議だと思った方は多いんじゃないでしょうか?

「なぜあんなインド人相手に平気でウソがつけたのに、オマエは日本の面接でそう都合のいいことが言えないんだ?」と。

ぼくもたしかに疑問でした。でもインド人についたウソはたかだか「アンケートページと紅茶の取引」だったけど、日本の就活面接は「安定した正社員というポジションと自分の自由な時間と好きな場所に行く権利の取引」です。

今ならわかりますが、やりたいことがあるぼくにとって、この契約を飲んだらどう考えてもしんどくなります。

そして最初に海外に出た時に気づいたんですが、ぼくは「空気を読む」というのが苦手でした。そこそこ人に合わせることはできるんですが、一度海外で自分の感情を思いっきり表現できる楽しさを知ってしまうと、日本で無理して人に合わせ続けるというのが苦痛になります。

それに面接ではそこまでやりたいことでないけれど、この会社で働き続けなくてはならないと思うと、急に頭の回転が鈍くなるんです。

だからぼくは苦手なんだと思います。そして面接で落ち続けていると自分自身が本当に使えないヤツに思えて否定された気になるので、ぼくはさらに面接をうまくなろうという気も起きませんでした。

友達のアドバイスを求めても、やりたくないことやるのに平気でウソをつくのが受かる秘訣だと言うし、それ自体にぼくは価値が見いだせませんでした。

正社員とは「自分で休みを決められないし、働く場所も会社が指定してくる」けれども、その時間を売る代わりに、「安定した給料と一番待遇のいい社会的保証を得られる契約」です。

でもなんのために自分の人生はあるんだろう?会社で安定した給料と保証を受けることは、3週間や半年も旅行に出かけられる自分の自由な時間を売ってまでやるべき価値のあることなんだろうか?

ぼくが大学時代の就活の時から、公務員面接で、ハッキリと表現できなかったけど、心の奥底で無意識にそう考えていました。

ぼくみたいな考えを甘えだと言いたい人はたくさんいるでしょう。

ハングリーさがない。たしかにそうです。あまったれてる。そりゃ1950年代に地方で生まれ、横浜にマイホームのマンションを買えるくらい頑張った両親や、そのまわりの人から見ればあまったれています。

そしてその人たちやまわりの同級生はたしかに一生懸命働いている。だから生きていくためにはお金を稼がなくてはいけない。

その人たちに認めてもらおうと、ぼくは公務員試験にすべて落ちてしまった後、公務員試験を続けることを選ぼうとしました。親にも心配かけてるし、まわりの友達も正社員として毎日働いてる。

その人たちに胸を張って頑張っていると思われる社会的地位を、ぼくは手に入れようとしたんです。

しかし当面はめぼしい公務員試験もなく、とりあえずお金が必要だからと百貨店での短期のお歳暮バイトでおカネを稼ぐことにしました。

ちょうど2011年の11月の中旬。今からほぼ2年前でした。

そしてどうしても面接がダメだったから、練習がてらと言ったら悪いんですが、好きな自転車メーカーの契約社員の面接をぼくは受けにいきました。バイトの休みのスキマをぬって、少しでも自分の弱点を克服しよう。そう思って面接を受けたんです。

その契約社員の面接でぼくはこう言われました。

「アナタは旅行が趣味だといいましたが、その旅行を通して得られた一番大切な価値観は何ですか?」

ぼくは息を吸って、こう言いかけました。

続く。

【エッセイ】 ぼくがオーストラリアへワーキングホリデーに行こうと決意したその理由 その3

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この記事を書いた人

職業HP制作業者、ライター、ブロガー。北海道札幌市在住。ブロガーやライターとして培ってきた取材インタビュー能力を活かし、お客様に自分達の商品・サービスが伝わるHP制作業を営んでいます。

過去に1年間のオーストラリアワーホリ、4年間の台湾在住、コロナ禍で帰国。神奈川県横浜市から北海道札幌市に移住し、暮らしています。

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